授乳前後におけるバストの健康美の維持管理(前編)

一般社団法人日本バストケア協会(以下、JBA)の技術導入をされている【Aya母乳育児相談室】の坂本亜也子先生に、授乳前後におけるバストの健康美の維持管理についてお話をお伺いしました。

坂本亜也子 先生

1974年、島根県松江市生まれ。
看護学校時代に精神分野に興味を持ち、母乳育児の大切さや幼児期の関わりの大切さを知り、助産師を目指す。
2005年に桶谷式乳房管理士として母乳育児相談室を開業。
母乳育児を軸にママの心と体のケアを行う中で、授乳後のママから相談の多いバストの悩みを解消すべくバストケアを導入。
JBA唯一の技術導入助産院として、共同研究にもご尽力いただいております。

●保有資格
アドバンス助産師
桶谷式乳房管理士
小児食生活アドバイサー

●Aya母乳育児相談室
〒690-0046
島根県松江市乃木福富町543-1

母乳マッサージについて

JBA南:坂本先生、今日はお時間をいただきありがとうございます。
早速ですが、坂本先生が普段されている施術について教えてください。

坂本先生:Aya母乳育児相談室では、母乳の出が悪いママさんがご来院されることが多いです。
施術としては、桶谷式乳房手技により乳房基底部(ラフス層)に手技操作を施すことで乳房全体をふわふわにし、乳輪・乳頸・乳頭を柔らかくして“赤ちゃんが飲みやすいおっぱい”にしていきます。それと同時に、詰まりや滞りを取り除くようなことをしています。

JBA南:JBAのバストケア理論では、バストのパフス層(表層の皮下組織)とラフス層(深層の皮下組織)のそれぞれの状態を考察しながらエステ施術のプランニングをしていきますが、助産師の先生方は、パフス層・ラフス層をどのように捉えながら施術をされているんですか?

坂本先生:そうですね、母乳マッサージでも、パフス層・ラフス層を区別しながら患者様のバストに触れて状態を把握していきます。
ラフス層の上に乳汁鬱滞やしこりができている場合は、それがパフス層にも及んでいるかどうかを感知しながら手技操作を行いますし、しこり部位に対してパフス層からゆっくり排乳を促してつまりをとっていくような場合もあります。

乳腺組織と、それを取り巻くパフス層・ラフス層には明瞭な境目はなくすべてが一繋がりですが、しこりや詰まりがどの部位にどの程度の範囲で起こっているかによって、手技操作は変わってきます。

JBA南:興味深いです。バストケアという美容の分野でも、パフス層には『むくみ』や『血行不良』といった循環のトラブルが起こりやすいと考えられますし、ラフス層には『固くなる』『ひきつる』といったような柔軟性のトラブルが起こりやすいと考えられます。母乳の出が悪くなってしまうメカニズムと、関連がありそうですね。

坂本先生:そうですね。
母乳マッサージもバストケアも、生理学的な仕組みは共通していると思います。
母乳マッサージの場合は深層(ラフス層)から乳房全体の巡りをよくすることで乳腺の本来の働きを促していきますが、エステでは乳房全体の細胞代謝を促進していく。バストというパーツを健やかな状態に整えるという目的は同じですし、理論的にも技術的にも通じるも点は多いです。
なお、私の経験上は、パフス層のトラブルとして多いのは、表面的なつまり、鬱滞、しこり。
ラフス層のトラブルとして多いのは、硬い、出にくい、滑走性。といった感覚です。

母乳の出の良し悪しとバストの状態

JBA南:バストの美と健康は、授乳期もそうでない時も、通じるものがありそうですね。
母乳の出が良いバスト、良くないバストの共通点は、ありますか?

坂本先生:大まかには、小ぶりなバストよりも、大きいバストの方が、母乳の出がいい傾向があります。
でも、バストが大きすぎると、出にくいです。

JBA南:バストが大きすぎても、出が悪いんですね。原因はなんでしょう

坂本先生:バストが大きいと乳輪・乳頭も大きい傾向がみられます。
すると、赤ちゃんが母乳を上手に飲めず、母乳産生に有効な刺激が伝わりにくいためと考えられます。
一方で、小ぶりなバストは乳輪・乳頭が硬い場合が多いです。
その場合は、滑りやすくて赤ちゃんが吸いにくく、刺激が伝わりにくいと考えられます。
また、小ぶりなバストは乳腺の数や容量が少ないのか、“おっぱい”をためられる容量が少ないように感じます。

JBA南:なるほど。そのような母乳育児の現場でJBAのエステプログラムを行っていただいていますが、エステの美容効果はどのように感じられますか?

助産師からみたバストエステの意義

坂本先生:JBAのエステプログラムの意義は、大きくは2点あると感じています。
一点は、全身からバストへの血行促進ができる点。
二点目は、バストをお椀型に整えていける点です。

血行が良くなることで乳汁産生が促されるので、母乳育児にとってもプラスに働くと考えています。
また、血行がよくなることでバストが上向き、トップにも上向き感がでるので、赤ちゃんが母乳を飲みやすくなるとも考えられます。
そして、母乳育児の分野でも“お椀型”のおっぱいが理想的とされていますが、エステを行うことでバストの張り具合が『まんまる』のお椀型に近づくようにも感じます。
母乳の出が悪い人には、積極的にエステを受けてほしいと思っています。

南:なるほど。バストの血流促進と形をお椀型に保つことは、JBAが理想と考えている“バストの健康美”そのものですね。
エステプログラムが授乳期のバストにもお役に立てていて嬉しい限りです。

坂本先生:バストのラフス層を柔軟に保つこと、パフス層をお椀型に固定することは、授乳期はもちろんですが、授乳前のバストにも、そして断乳・卒乳後のバストにも共通して必要なケアだと思います。
授乳前、授乳期、断乳・卒乳と、それぞれの時期に、必要な乳房管理を行うことが、もっと広まれば良いなと思っています。

JBA南:授乳期だけでなく、日頃からの乳房管理。
つまり、それぞれの時期に合ったバストケア習慣ですね。
次回、その点についてお話をお伺いしたく存じます。

この記事を書いた人

南 育枝

日本バストケア協会代表理事